コーディネータ
OSS開発はメールや掲示板などの非対面のコミュニケーション方式を用いて議論が行われます.加えて大規模なOSS開発では,開発者やユーザ,テスタなどの参加者の役割ごとにサブコミュニティ(メーリングリストなど)を設けることが一般的です.この運用方法は情報の混乱を避け,開発者(またはユーザ,テスタ)にとっての知識や情報,議論の選別が容易に行えるというメリットが得られる一方で,お互いの情報共有や協調作業が困難になります.これは,ユーザからの意見が開発にフィードバックされないことによるプロダクト(ソフトウェア)の成長の阻害や,新規ユーザの正統的周辺参加が成立たないことによるコミュニティの成長の阻害などの問題を引き起こします.そこで本研究では開発者とユーザの両方のサブコミュニティに参加している人物:コーディネータに着目し,成功とされるOSSと衰退期にあるOSSの比較・分析を行っています.
分析の結果,現在でも高品質なソフトウェアを提供しているApacheコミュニティでは,長期に渡って両コミュニティの調和活動を支えるコーディネータが存在することが確認されました.また衰退期にあるNetscapeの場合,両コミュニティとの頻繁にコミュニケーションを図るコーディネータが不在していることが明らかになりました.